IKEAにいた時のお話③ ソファ売り場担当として② 2007年〜2008年
<ブログ著者 前澤和宏について>
皆さん、初めまして。株式会社マエザワ(店舗名ピオン)の3代目後継者の前澤和宏と申します。世界一楽しい空間を作るのが夢でそれを実現させるため静岡の家業に入社しました。ピオンが皆さんにとって地域のディズニーランドになりたいと思って頑張っています。会社経営をしたり、You Tuberをやったり、2児の父親だったり、ラッパーだったりします。このブログでは、僕の体験した事や感じた事を楽しくお伝えできればと思っています。宜しくお願いします。
1978.08.13生まれ
学歴 清水東高校卒・東京学芸大学卒・UC Berkeley Extension/Business Administration修了
職歴 Club Asia・For-side.com USA・For-side.com・TFMインタラクティブ・IKEA ジャパン
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(前回からの続きです)
降格をかけて、3ヶ月に3回も大きな売場変更をしたけど、ソファ売場の売上はいっこうに上がりませんでした。売上の順位も相変わらず5店舗中5位。そして、約束の3ヶ月。
「あー終わったー。みんな俺のわがままに付き合ってくれて本当に有難う。掃除でも、皿洗いでもなんでもするから、チームのメンバーには手を出さないで」
と思っていたけど、諦めの悪い僕は、その日の朝にドミニックのところに行って
「もう少し売場変更をする良いアイディアがあるから、もう一度チャンスをくれないか」
と伝えました。そしたら、
「この前、売場を変えたばかりなんだだから、もう少し様子を見ろ」
と、言われました。どうやら、3ヶ月前に言ったミッションすら忘れているらしい。一体なんだったんだ。寝れなかった、あの日々は。。。こんなに苦労する必要なかったんじゃないかとも思いました。でも、やっぱり納得がいかない。だって日本一ソファーを売るって決めたし、なんなら世界一になりたいと普通に思っていたので。
このままじゃ終われませんでした。
2.接客しない会社方針を曲げて、力一杯接客をする
ある日の通勤バスの中で、Cさんと一緒になりました。Cさんは僕がキッチン雑貨売場にいた時の上司(マネージャー)で、僕にソファ売場のマネージャーになる事に太鼓判を押してくれた人でもありました。いつもの様子で、「どう?カズ、ソファ売れてる?」って話になりました。
「いや、全然っすよ。何やっても難しい感じっす。大阪の人はソファ買わないんですかね??」
「確かにね。うちの社員でもソファ持っている人少ないんじゃない?大阪の人のリビングは、ダイニングテーブルとテレビがあるって感じだよね。でもさー、そんな人たちに対して、セルフでソファを買ってくれって無理な話なんじゃない?自由にソファを選んでくださいって、ソファ買った事がない人が自由に選べるわけないと思うよ」
「あっ」
僕は、目から鱗でした。
IKEAの販売方法は、メカニカルセールスといって、接客をしないでお客様がセルフサービスで家具を買う。だから価格が安い。そう言った販売方法でした。販売員は何をしているかというと、掃除、値札付、在庫管理、売れているものを前に出すのがメインの仕事でした。自分たちから進んで接客はするべきではないと言われていました。かと言って、常に仕事があるかというとそうでもなく。(と言ったら怒られるかもだけど笑)何も仕事がないときは、お客様がいても、PCの画面を眺め、先週は何個売れた?今週の予測は何個。今ある在庫量は?これから入ってくる量は?と一生懸命計算をしていて、横にいるお客様が質問してきて初めて顔を上げるというのが販売スタイルでした。
「2、3万のコートを買うのにも接客が必要なのに、一生に1度か2度ぐらいしか買わないソファを接客なしで買うなんて無理だ。安いって言ったって2、3万は大金だぞ」
と心から納得しました。
そして、Cさんに接客トレーニングの講師をお願いしました。Cさんの以前の職場はアパレルで、接客の講師もやっていたからです。
ソファ売場にいくと、案の定パートの男の子がパソコンを眺めています。
「Kちゃん(男の子)さぁ、今まで俺ら散々、売場変えてきたけど、全然数字変わってないじゃん。多分やり方が悪いと思うんだよね。だから、販売スタイルを変えて、自分たちから接客をしよう。ソファ売場に入って、ソファを見ているお客様がいたら、すぐに話しかけてね。あと、接客トレーニングが今月末あるからヨロシク」
そんな感じで、メンバー一人一人に話していきました。接客するなと言われてきた子たちに対して、いきなり接客しろというので、みんな動揺していたと思います。でも僕は遠慮なく、お客様がいる時にパソコンを見ている子がいたら、接客に行かせました。何よりも自分がそうしました。
そして、トレーニング当日になりました。このトレーニングは上司には内緒で行いました。上司に事前に報告したら絶対に止めろと言われると思ったからです。休みなのに出てきてくれるパートさんの方もいらっしゃって本当に嬉しかった。たぶん、コンセプトの厳しいグローバル企業で、いち社員が勝手にこんな研修やっている事がバレたら一大事になってたんじゃないかなと今では思います。
でも結論から言うと、Cさんの接客トレーンングは本当によかったです。接客の大切さだけじゃなく、IKEAのコンセプトと結び付けて、だからIKEAジャパンのソファ売り場の僕らは接客が必要なんだ。話し方やテクニックじゃなくてお客様に興味をもつ、お客様を見る事が接客の始まり。お客様との信頼関係は商品知識と売ろうとしないでお客様の事を考える姿勢が重要。10年以上たった今でも教えてもらった事をはっきりと覚えています。
そして、その日以来、チームのメンバーの目の色が変わったのです。
毎週末は、みんなで楽しく競争でした。「カルルスタッドのソファ何個売った!」「高いレザーソファが売れそう!」「ソファベッドはどう?」なんて、ポジションを決めて、みんなで楽しく声掛け合って、ソファを売り続けました。
売上がみるみる上がっていき、日本で2位になりました。
でも、ここまでくると結果なんてどうでもよかった。それより得られるものの方が大きかったし、多かった。
1番は仲間、今でもそのソファ売り場のメンバーとは連絡を取り合っているかけがえのない友達です。2番目は自信。ここまで、チームと数字が変わったのは、みんなの自信に大きくなったと思います。もちろん僕も含めて。3番目は、これが最も重要、お客様の喜ぶ顔です。一人一人のお客様と向き合って、お客様の楽しい生活のお手伝いができた事は本当に楽しかった。自慢じゃないですが、接客をしない会社で僕はお客様からお礼のプレゼントを2回もらっています。(どうしていいか分からず、すぐに食べてしまいましたが笑)
社内でも、他の店舗からも「一体鶴浜は何やっているの?」と言う声が上がり始めました。質問があると僕は「接客をしてます」と答えました。「接客でそんなに上がるの?他に何やっているの?売り場はどんな感じなの?」と僕にとっては信じられない話ですが、みんな僕の言うことを信じてくれません。接客で売上が上がるなんて思ってもいませんし、仮に思っていたとしても、自分たちには接客をする時間がないと思っているので、接客で売上が上がるなんて信じたくないのでしょう。
そしたら、ビデオにとって送ってくれと言われて、接客している姿のビデオが撮られ、IKEAジャパン中に配られました。質問もいっぱいきました。良い事をしているつもりでやったのに、なぜか、「そんなのIKEAじゃない」と文句もきました(笑)「だったら、別にやらなきゃいいじゃん。強制じゃないんだから」とサラリーマンの僕は普通にそう思って開き直っていました。
時間がきたので、この辺で。
次回は「売り場テスト(コマーシャルレビュー)でのつるし上げ」になります。
ソファ売り場担当のお話しは、僕の人生にとても重要な役割をはたしているので長いです笑
(写真は、ピオン清水店の家具売り場の写真です。IKEAの時の写真はありませんでした。。)